最近ロンドン市長が、イスラム教徒のサディク・カーンさんになったというニュースがあった。
だからというわけではないが、しばらく前に読んだおなじみ島田裕巳さんと国際的にも有名なイスラーム学者中田考さんによる共著『世界はこのままイスラーム化するのか』はとても面白かった。
イスラム学者というのはけっこういるのだけど、中田さんのようにリアルにイスラム信者でなおかつイスラム学者、というのは意外にも珍しいらしい。
そのような色々なイスラムのトレビアももちろん面白かったが、イスラムのしっかりとした根幹的思想もわかり、かなりわかりやすい、勉強になる本である。
この本にも書いてあるとおりイスラム教徒はじわじわと増えているらしい。もちろんISのような過激な集団ではなく、いわゆる一般のひとたちが、ということであるが。
イスラム教徒の人口比率ということでいうと一番多いのがインドネシア、その次がインドとインド周辺、そしてアフリカ、そして、われわれが想像するいわゆるアラブの中近東の国々という人口順になるそうだが、ヨーロッパでもエリアによってはイスラム教徒の方が多いエリアもあるらしく、以前イスラムの王朝になったことのあるスペインは相当警戒しているらしい。
他にも肌を隠す、等は絶対禁止ではなく、そのような記述がクルアーンとハディースの中にあり、それをどう解釈するかはそのコミュニティの法学者の解釈や、その個人の解釈によるところがある。
とか、
お金を貸す時利子をとることは禁じられている。
とか、
キリスト教や仏教のように出家するというタイプの聖職者はいなくて、近所のおじさんの中の信頼されている詳しい人が、クルアーンとハディースの解釈をする、みたいな感じ
とか、
ご飯をおごる、とかは喜捨に該当するので天国いく時のポイントになる。ので3人がご飯を食べにいくなら、1回で割り勘にしてしまうよりも、月曜日はAさんが全部おごって火曜日はBさんが全部おごって水曜日はCさんが全部おごると全員天国ポイントがアップするのでお得だという話し
とか、
カリフ制というのは、カリフがクルアーンとハディースを代表して解釈しながら統治するのがイスラーム国家としてはひとつの理想で、今のようにいくつか国があって、その国ごとによって権力者がいて統治しているのは本来的には違う、ということ。
とかなるほどなぁというところもたくさんあった。
中田さんが強調していたのは、イスラム教というのはとにもかくにもアッラーと預言者ムハンマドと信者個人との関係が重要なのであって、組織や国はあんまり関係ない、という部分で、そういう意味では現在のイスラームはけっこう違っちゃってるんだよぉ。
ということであった。
そして一番うぉぉ!これはウチらと全然違う!と思ったのは、その時間軸と時間の考え方だった。
基本的にアッラーがムハンマドに預言を与えた時代が最高で、ムハンマドから時代的に離れれば離れるほどどんどんイマイチになっていく、という時間解釈らしい。
要するにアッラーとムハンマドにどれだけ近づけるか、というのが重要で時間はあまり関係ない。
ダーウィンの進化論ももちろん論外だし、ヘーゲルやマルクスみたいな、時代が新しくなるにつれ、人間はどんどん反省して、どんどん止揚されて、技術は発達してみんなよくなっちゃうよ~んという歴史観とかはまったく関係ないということだ。
これには色んな時間の考え方があるんだなぁとちょっとびっくりした。